民事再生手続き

民事再生手続きとは

法律上の再生手続きと言えば、最初に思い浮かぶのが「民事再生手続き」だと思います。
この法律は、2000年(平成12年)から施行され、私自身、2001年に申し立てられた再生会社の監督委員に選任され、一定の関与をした経験があります。

法律制定・施行当時は、会社経営者の中に「民事再生の開始決定=会社の再生」という期待があり、民事再生の申立を行えば会社が再生するという雰囲気でした。しかし当然ながら、「民事再生の開始決定=会社の再生」ではありません。
債権者は、取引債権も含めて大幅な債権カットを強制されるため、簡単な手続きではあり得ないのです。

法律が整えられても、実務的には難題が山積みしているのが現実です。また法律上の枠組み自体も、ある程度大きな会社を前提としているように思えます。
民事再生法による再生は、特に地方都市における小規模な会社の再生には必ずしも有効な方法とは言えないように思います。

1. 収益弁済型の民事再生

(1)収益弁済型では再生できない

一般的に、民事再生によって再生した会社は、今後の収益によって再生債権を返済していく「収益弁済」を前提としているように思います。
ただし、収益弁済型の民事再生は、本当の意味での再生ができず、結局、破産に至る例も多いのです。

私が経験した事例でも、再生債権の95%をカットし、残り5%を10年の分割で支払うという計画を立てましたが、それでも9年目に破産に至りました。非常に残念です。

(2)地方ではスポンサーが見つからない

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。
民事再生法の適用を受けても、銀行取引が停止されるわけではありません。しかし、当然金融機関からの新規融資は受けられませんし、通常、地方においては当座取引も中止されます。

すると再生会社は、手形を受け取っても割り引く手段がなく、支払期限まで手元に置いておくしかないので資金が回らなくなるのです。
そのため、再生会社には実質的な資金提供者(スポンサー)がいないと、事業を継続することができません。
しかし、再生会社に資金を提供してくれる会社は、地方では極めて少ないのが現状です。

(3)法律上も厳しい枠組み

法律上も、決して再生会社に優しい仕組みにはなっていません。例えば、工作機械が故障したので、早期に買い替えの必要が生じた場合も、監督委員の許可が必要になります。
しかし、現場は監督委員の許可を待っている時間がない場合もあります。機械が故障している間は売上が立たず、資金を圧迫していきます。

民事再生法は、会社更生法よりも使い勝手が良い制度としてスタートしたのですが、一定の規模を有する会社を前提としているように感じています。

2. 事業譲渡プレパッケージ型の民事再生

(1)事業譲渡を前提とした民事再生の申立

弁済型の民事再生法の問題点を受けて、スポンサーに事業譲渡することを前提に民事再生を申し立てる方法が採用されるようになりました。

本来の民事再生と言えるか疑問もあったようですが、最近はむしろこの方式が採用されることも多く、書物によれば、民事再生申立の約4割がこのパターンと言われています。

(2)スポンサーが見つかりにくいという課題

スポンサーは再生会社に対し、民事再生の申立前から資金提供を含めた様々な援助を行うのが普通です。
しかし、いざ民事再生を申し立て、事業譲渡を行おうとすると、他の債権者から横やりが入る場合があります。
事業譲渡代金に納得ができない、自分ないし他の企業ならもっと高く買うことができる、といったクレームです。

そうすると、裁判所としては入札をして買い主を決める方法を採用することになります。
しかしスポンサーは、民事再生の申立前から援助してきているため、ここで少しだけ高い値付けの他の企業に譲渡されたのではたまりません。
しかも、他の企業が本当にスポンサーとして名乗りを上げるのか不明であり、時間が経てば経つほど企業価値が劣化していくのです。

(3)風評被害による事業価値の毀損

民事再生には、もう一つ決定的な問題があります。
民事再生法による再生は裁判所に申し立てますので、手続きが公開(官報に搭載)されるのです。
もちろん、商号変更等の手段を講じた上で申し立てるのですが、不思議なことに調査会社等によってかぎつけられ、結局、メディアにニュースとして流れてしまうことが多いのです。

ホテルやスーパーなど、メディアに報道されると収益に大きな影響が出る業種では、特に使いにくい制度であることは間違いありません。

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