特定調停手続き

廃業支援型の特定調停手続きとは

自己破産に対して、2017年、事業者の廃業・清算を支援する手法としての「特定調停を利用するスキーム」が提案されました。
裁判所が仲裁役となって、金融機関等の債権者の合意を得ることによって、会社を清算するものです。

特定調停のメリット
① 商事債権の支払いが可能
② 費用が安い
③ 保証人の経済的な再スタートが図りやすい
特定調停のデメリット
① 金融債務以外の支払いが前提
② 債権者との綿密な事前協議が必要
③ 信用保証協会の求償権放棄の適合性が要求される

特定調停手続きのメリット

① 商事債権の支払いが可能

破産の場合は、一般の取引先に対する債務(商事債権)も一律に破産債権とされるため、少額であっても取引先へ債務を返済することができません。
しかし特定調停では、金融機関等の債権者の了解が前提ではありますが、商事債権を支払うことが可能ですので、取引先との信頼関係を維持することができます。
これは会社代表者がこれからもその地域で生きていく場合、実は大きなメリットとなります。

② 費用が安い

破産予納金は通常100万円単位とされていますが、特定調停では5万円程度であることが多く、コストは低額です。

③ 保証人の経済的な再スタートが図りやすい

連帯保証人である会社代表者の債務整理を同時進行で行うため、保証人(会社代表者)の経済的な再スタートが図りやすいといわれています。
この場合、保証人については「経営者保証に関するガイドライン」によって債務整理を図るのが一般的です。

特定調停手続きのデメリット

デメリットというよりも、廃業支援型の特定調停を行う場合は、様々な前提条件があります。
破産のように「債務超過であればどんな場合でも申立が可能」という手続きとは異なります。
そのため、廃業支援型の特定調停を利用して清算することができる会社は、それほど多くないと感じています。

① 金融債務以外の支払いが前提

原則として、金融債務以外の債務について支払可能であり、金融債務のみが残る状態になる必要があります。
このようにして債権者を最小限に絞っておかないと、いくら特定調停の申立をしても話がまとまる可能性がないからです。
したがって、手続き上のコストは破産より低額であるとしても、事業者としてある程度の資産を保有していることが前提となります。

② 綿密な事前協議が必要

積極的に財産を開示し、金融機関等と事前に、密に連携・協議する必要があります。
金融機関等の債権者としては、破産等の法的手続きによらず、債権を放棄しなければならないので、資産内容を含め様々な情報開示を求めてきます。
事業者は誠実な債務者として、基本的には、それらの要求に応じる必要があります。

債権者の中で一社でも協議内容に反対する者がいた場合、調停は不成立となりますので、全債権者に納得してもらえるように準備しなければなりません。

③ 信用保証協会の求償権放棄の適合性

債権者の中には、協会保証付きの債権を保有している金融機関もあると思います。
信用保証協会は、誰にでも求償権放棄に応じるわけではありません。信用保証協会が求償権放棄を行うことが可能な条件を満たす必要があります。
その意味で、債権者の中に信用保証協会が含まれる場合には、(代位弁済前であっても)慎重に対処する必要があります。

無料の初回相談で見通しを立てましょう

会社を清算する方法はここで紹介している以外にも多くありますし、清算しなくても良い可能性もゼロではありません。
一人で思い悩んで決めつけずに、正しい判断をするためにも、まずは弁護士へご相談してください。
とることのできる選択肢や、今後の見通しを知ることができれば、抱えている不安も小さくなるのではないでしょうか。

時間がたてばたつほど、選択肢も限られてしまいます。当事務所への初回相談は無料ですので、まずはお早めにご相談ください。

そのほかの方法について、詳細は下記のページをご覧ください。

① 清算型の倒産 自己破産手続き
特定調停手続き
② 再生型の倒産 破産手続きを利用した事業再生
民事再生手続き
私的整理手続き
③ 保証債務型 経営者保証ガイドラインによる債務整理